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消化器内科

ピロリ菌って何ですか?自覚症状と除菌治療について

ピロリ菌って何ですか?

ピロリ菌は胃の粘膜に生息する細菌です。ピロリ菌に感染すると、胃炎、胃十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫を起こす原因となります。他にも鳥肌胃炎という粘膜上皮内へリンパ球浸潤が強く認められる胃炎となる事があり、スキルス胃がんの原因になるとも言われています。また良性の胃ポリープ(過形成性ポリープ)の原因にもなります。

胃の中には、胃酸という金属でも溶かしてしまう強い酸(塩酸)が含まれているため、通常の細菌は生息できません。ではピロリ菌はなぜ胃の中で生きていけるのでしょうか?

ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素分泌しています。この酵素は胃の中の尿素を分解してアンモニアを作りアルカリ性となり胃酸が中和され、生息できるのです。

ピロリ菌の持続感染にて胃炎が長期間続くと、胃粘膜の萎縮(粘膜が薄くなる変化)が起こります。さらに進行すると胃粘膜上皮がびらんと再生が繰り返され、胃粘膜に腸管粘膜上皮の形態に変化します。このような変化が出ている状態は胃がんの原因となると言われています。

ピロリ菌の感染経路と自覚症状について

ピロリ菌の感染経路

どのようにして感染するかはよくわかっていないのですが、現在では多くの場合で家族間で感染すると考えられています。

だいたい8割が家族内感染、家族外感染が2割ぐらいとされています。

基本的には、唾液を介しての感染と考えられています。口移しで離乳食を食べさせる事が多かった時代には、両親がピロリ菌陽性であった場合は家族内感染の原因となっていたと考えられています。

現在は虫歯の予防のため、口移しでの離乳食を食べさせることが減っていますので、このような要因もピロリ菌罹患率の低下に繋がっていると考えられています。

ピロリ菌の世代別感染率では、日本人の50代以上は40%程度、40歳代は20%程度、19歳以下で5〜10%前後の人がピロリ菌に感染しているという報告があります。

高い年齢ほど感染率が高いのは、この世代の衛生環境が原因とされます。特にピロリ菌に汚染された井戸水などを使用していたことが原因の一つと言われています。

自覚症状について

  • 胃の痛み
  • みぞおちの痛み
  • 消化不良
  • ゲップ
  • 吐き気と胸焼け
  • 食欲不振

 

ピロリ菌が原因と考えられている病気について

胃炎(慢性胃炎)

胃十二指腸潰瘍

胃がん

良性胃ポリープ(過形成性ポリープ)

正常粘膜と比較すると、ポリープの表面は赤く凹凸があります。基本的に良性ポリープで切除は不要ですが、抗血栓薬(抗凝固薬や抗血小板薬)で出血の原因となったり、大きさが2センチ以上となると胃がんを合併していることもあり切除します。

胃MALTリンパ腫

消化管では胃に最も多く発生する節外性リンパ腫で、70〜80%がピロリ菌感染が原因とされています。多くは小型のB細胞あるいは成熟した形質細胞由来です。ピロリ菌が陽性のMALTリンパ腫に対しては除菌療法で80〜90%が治癒するとされています。MALTリンパ腫を初めとする消化管原発リンパ腫は節性リンパ腫に比較して予後は良好とされています。

特発性血小板減少性

特発性血小板減少性患者さんでピロリ菌陽性である場合、抗菌剤でピロリ菌の除菌を行うと半数以上の患者さんで血小板数が増加することから、ピロリ菌が陽性の場合、まず除菌療法を行なうことを勧められています。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査方法

血液検査:ピロリ菌抗体検査
便検査:便中抗原検査
尿素呼気試験

ピロリ菌検査に際して行う、胃カメラの必要性について

ピロリ菌検査は保険診療では胃カメラを行なって、胃炎など、ピロリ菌感染性変化を確認できた場合に行います。

人間ドックや健康診断でピロリ菌を指摘された方も、除菌治療前に胃カメラをして粘膜の状態を確認します。

ピロリ菌が胃の中に棲みついてしまうことで少しずつ胃粘膜を痛めつけてしまい、何十年にもわたって徐々に炎症が広がっていくことで胃の粘膜が薄くなる萎縮性胃炎になります。

さらに進行すると胃粘膜上皮にびらんと再生が繰り返され、胃粘膜に腸管粘膜上皮の形態に変化します。これを腸上皮化生と言います。正常粘膜と萎縮粘膜の境界付近や、腸上皮化生で胃がんが発生しやすいと言われています。ピロリ菌患者さんにまず胃カメラを行うのは、治療前に胃がんを合併していないかや、粘膜の胃がんリスクを評価し、適切なタイミングで胃カメラを案内するためです。

胃内視鏡検査

除菌治療について

ピロリ菌の除菌治療

一次除菌療法

抗生剤2種類+制酸剤(プロトンポンプインヒビター)

クラリスロマイシン(風邪薬として処方されることの多い薬です)とアモキシリン(ペニシリン系の抗生物質です。ペニシリンアレルギーのある方には使用できません)及びプロトンポンプインヒビター(ボノプラザン 商品名:タケキャブ)という薬を使用します。

二次除菌療法

抗生剤2種類+制酸剤(プロトンポンプインヒビター)

クラリスロマイシン(風邪薬として処方されることの多い薬です)とメトロニダゾール(アメーバ感染やトリコモナス症、嫌気性菌、感染性腸炎などで使用される薬です)及びプロトンポンプインヒビター(商品名:タケキャブ)という薬を使用します。ペニシリンアレルギーがある場合はこちらの薬で最初から除菌治療を行う場合もあります。

注意:メトロニダゾールはアルコール摂取すると除菌効果が落ちることと肝障害が出現しますので、内服期間中は必ず禁酒しなくていけません。

除菌療法の歴史

除菌療法の治療効果低下が問題となっていましたが、2015年にカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)(一般名「ボノプラザン」商品名 タケキャブ)というお薬の登場により、除菌治療の成功率が90%程度まで改善向上しています。
一次除菌に失敗した場合は2次除菌治療を行います。これにより数%の上乗せ効果が期待でき95%程度は除菌可能です。

二次除菌に失敗した場合は、自費治療となりますが三次除菌治療を行います。

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