アニサキス症とは
アニサキスとは約20~30mm程度の白い糸のような寄生虫です。アニサキスに汚染された海産魚介類を生食すると腹痛(軽度〜激痛)、腸閉塞や腸穿孔、アレルギーなど、様々な症状を呈します。これらの症状を呈する寄生虫病をアニサキス症と言います。
食事歴などからアニサキス症が疑われる場合は、胃カメラを行います。アニサキス虫体を発見した場合は胃カメラで除去することで速やかに症状が改善することがあります。
(私自身も大学生の時に、サバ寿司を食べてなったことがありました。感染症の授業で、寄生虫学の実習でサバの解剖をして、筋肉や皮の下に大量のアニサキスを観察させてもらった授業があった頃になりました。なぜか学生の血液検査があり、採血後数後に教授室に呼ばれ、私のアニサキス抗体値が非常に高く病歴について聞かれたこともあります。)
アニサキスの生活史
アニサキスは、イルカやクジラなどの体内で成虫となります。アニサキスの成虫は卵を海中に放出し、プランクトン(オキアミ)が食べ、それをサバ、イカ、イワシ、サンマ、カツオ等が食べ、最終的にイルカやクジラの胃の中で成虫になると言われています。
胃の中で成虫となるため、酸に強くお酢では死にません。
アニサキスの症状
胃アニサキス症
アニサキスに汚染された、海産魚介類を摂取して数時間〜10数時間後に起こります。強いみぞおちの痛みや吐き気などの症状が出現します。胃の壁にアニサキスが突き刺さったことによる直接の痛みではなく、胃壁とアニサキスに対するアレルギー反応が痛みの原因とされています。
アニサキスが突き刺さった部位では好酸球増多が認められ、血液検査では血清IgEの増加、アニサキス幼虫抗原に対する特異的なIgE抗体の増加がみられ、I型アレルギーが関与していると考えられています。胃アニサキス症はアニサキス虫体を内視鏡的に除去することで速やかに症状が消失しますので、緊急で内視鏡を行います。
腸アニサキス症
消化管アニサキス症の31%を腸アニサキスが占めると推定されています。胃アニサキス症に比べて、腸アニサキスが少ないのは腸アニサキス症の診断が困難なためです。小腸内視鏡が発達してきてから腸アニサキス症が内視鏡で発見されることも報告されるようになりましたが、以前は虫垂炎や急性イレウスなどと診断されて手術される例が多くありました。
アニサキスとアレルギーについて
アニサキスの初感染では、症状は穏やかな場合が多く、強い腹痛を認める急性アニサキス症は、アニサキス再感染の場合が多いとされます。痛みの原因も、血清IgEの増加とアニサキス幼虫抗原に対する特異的なIgE抗体の増加が認められることから、Ⅰ型アレルギーの関与があるとされます。
これまで「サバなどの青魚アレルギー」だと思われている方が、実は「アニサキスアレルギー」であったことが知られています。
アニサキス症の検査と治療
検査
アニサキスに汚染た海産魚介類を生食しており腹痛がある場合は、胃カメラを行います。直接確認できた場合は内視鏡で摘除することができます。
胃内にアニサキスを認めない場合で、強い腹痛がある場合は腸アニサキスの可能性があります。実際に調べるには、血液検査で抗体検査をしたりCT検査などが必要で、大きな病院に紹介することになるケースもあります。
治療
胃カメラにてアニサキスを認めた場合は、摘除することで痛みは改善してゆきます。摘除できない場合は、抗アレルギー剤やステロイドを用いて保存的に様子を見ることもありますが、アニサキス専用の薬はありません。
アニサキスの予防
加熱する
アニサキス幼虫は60℃で1分、70℃以上では瞬時に死滅します
冷凍する
-20℃で24時間以上冷凍すると死滅します。
鮮度の悪いものは生食しない・内臓は食べない
鮮度が落ちると、アニサキスは内臓から筋肉へ移動します。新鮮な魚でも内臓を取り除くことが望ましいです。